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予知保全とは?仕組み・メリット・導入手順とエッジ基盤の役割

予知保全とは?仕組み・メリット・導入手順とエッジ基盤の役割

予知保全とは、センサーやIoTを活用して設備の状態を常時監視し、故障の兆候を事前に察知してメンテナンスを行う手法です。突発的な設備停止を防ぎ、部品交換コストを最適化できる反面、導入には初期投資やデータ処理の仕組みづくりが欠かせません。本記事では、予防保全との違いや具体的な導入ステップ、そしてデータ処理の要となる産業用PCの役割までを順に解説します。

■ この記事の要約

 • 予知保全は設備を常時監視し、故障の兆候を事前に察知してメンテナンスを行う手法である
 • 計画的に部品を交換する予防保全と異なり、状態に合わせて保全するためコストの無駄を省ける
 • センサーでデータを計測し、IoTで収集、AIで解析する仕組みが基盤となる
 • 導入時は生産への影響が大きい重要設備を選定し、小規模なテスト導入から効果を測る
 • エッジ処理を担う産業用PCを活用することで、通信負荷を減らしリアルタイムな異常検知が可能になる

予知保全とは

予知保全とは、稼働中の設備から取得したデータをもとに”いま実際にどんな状態にあるか”を読み取り、その情報を根拠にメンテナンスのタイミングを決める保全アプローチです。決められた期間や故障発生といった外形的なきっかけではなく、設備そのものが発しているサインを起点に動く点が、この手法の中核になります。

具体的には、稼働中の設備に設置したセンサーから振動や温度などのデータを継続的に取得し、過去の正常なパターンと比較することで、通常の動作から外れるわずかな変化を捉えます。人間が定期的に巡回するだけでは気づきにくい初期段階の異常も発見しやすくなり、深刻な故障に発展する前に対処できる状態を作りやすくなります。

予防保全や事後保全との違い

従来の保全手法と予知保全では、メンテナンスを実施するタイミングと判断基準が大きく異なります。

保全手法 判断基準とタイミング
事後保全 故障や停止が発生してから修理や部品交換を行う
予防保全 設備の稼働時間や期間に基づいて計画的に交換する

事後保全は故障発生後に修理する

設備が完全に停止するか、明らかな不具合が生じてからメンテナンスを行う従来型の手法です。部品の寿命を最後まで使い切れる利点はあるものの、故障時の被害予測が難しく、復旧に長時間を要するリスクを伴います。そのため、仮に停止しても生産全体への影響が極めて小さい、補助的な設備に適用されるのが一般的です。

予防保全は計画的に部品を替える

設備の稼働時間や一定の期間を基準として定め、不具合の有無にかかわらず定期的に部品を交換します。突発的な故障のリスクは下がりますが、まだ十分に使える部品まで一律で交換してしまうため、部品代や作業工数の無駄が生じやすい側面を持っています。こうした過剰なコストが、状態基準でメンテナンスを行う手法と比較したときの予防保全の限界だといえます。

予知保全を支える技術と仕組み

予知保全のシステムは、現場の物理的な情報を数値化し、集約・解析する複数の技術によって成り立っています。

技術要素 システム内での役割
センサー 設備の温度や振動などの物理状態を数値化する
IoT 複数の設備から収集したデータをネットワーク経由で送る
AI 蓄積されたデータから異常のパターンを自動で解析する

センサーで温度や振動を計測する

モーターやポンプなどの対象設備に計測器を取り付け、稼働中の物理的な変化を継続的に数値化します。設備の特性や予測したい故障の内容に合わせて、振動、温度、電流、音などを検知する多様なセンサーを使い分けるのが通例です。この段階で高精度な計測環境を整えることが、システム全体の異常検知精度を左右する土台となります。

IoTで現場データを常時収集する

センサーが読み取った情報をネットワーク経由で集積し、一元管理できる状態を作ります。工場内の多数の設備から上がってくる膨大なデータを、途切れることなくサーバーやクラウドへ送信する仕組みです。有線LANや産業用Wi-Fi、LPWAなどの通信規格を現場の環境に応じて選択し、障害に強い安定した通信網を構築します。

収集したデータをAIで解析する

蓄積された膨大なデータから正常稼働時のパターンを学習し、そこから逸脱する動きを異常として検知します。人間が固定の閾値を設定する手法では見逃しがちな、複数項目の複雑な相関関係も、AIであれば捉えやすくなります。熟練の保全担当者が感覚的に捉えていた「いつもと違う音や振動」を、定量的な基準としてシステム化しやすくなります。

予知保全を導入するメリット

状態監視に基づく保全へと移行することで、コストや生産性の面で企業に多くの恩恵をもたらします。

もたらされるメリット 具体的な効果
ダウンタイム削減 計画外のライン停止を防ぎ、納期遅れを回避する
コスト抑制 寿命が残っている部品の早すぎる交換を防ぐ
生産性向上 設備の稼働時間を最大化し、全体の生産効率を高める

突発的なダウンタイムを削減する

深刻な故障による長時間の設備停止を防ぎ、計画通りの生産スケジュールを遂行できます。駆動部品などが完全に破損すると、周辺の機構まで巻き込んで被害が拡大するケースも珍しくありません。わずかな兆候の段階で適切な処置を施すことで、修理にかかる時間と手間を抑えやすくなります。

無駄な部品交換コストを抑える

部品ごとの実際の消耗具合に応じて交換時期を見極め、早すぎる廃棄をなくします。カレンダー基準の定期メンテナンスでは一律で部品を新品に替えますが、稼働状況によってはまだ十分に寿命が残っていることも多いです。個別の状態基準での交換に切り替えることで、年間の過剰な部品調達費用の適正化が期待できます。

設備稼働率を高め生産性を上げる

突発停止の減少とメンテナンス頻度の最適化により、設備が安定稼働し続ける時間を伸ばしやすくなります。製造業において、設備の稼働率は企業の利益に直結する重要な指標です。保全業務そのものにかかる時間も圧縮されるため、限られた人員でより多くの設備を管理できる体制が整い、工場全体の生産能力が底上げされます。

導入時のデメリットと注意点

多くのメリットがある一方で、導入初期のハードルや運用を軌道に乗せるまでの課題も存在します。

導入時の注意点 影響と現場での対策
初期投資 中核設備に絞ってスタートし、投資回収の目処を立てながら段階的に拡張する
データ不足 学習が進まず精度が出ない期間は検証を重ねモデルを調整する
運用ルール 現場の業務フローを変更し、新しい手順を浸透させる

導入に伴う初期投資が発生する

多数のセンサー購入やネットワーク構築、AI解析システムの導入にまとまった費用がかかります。すべての設備に一斉導入しようとすると、莫大なコストになり社内稟議を通すのが難しくなります。そのため、停止した場合の損失額が大きい中核設備に絞ってスタートし、投資回収の目処を立てながら徐々に拡張していく進め方が一般的です。

データ不足で予測精度が落ちる

正常時の稼働データや過去の故障履歴が十分に蓄積されていない段階では、異常の検知精度が上がりません。AIが正確な判定を下すには、正常と異常の違いを学習するための良質なデータが欠かせません。稼働直後は誤報や検知漏れが起こることを前提とし、段階的にAIの予測モデルを調整していく検証期間を設けます。

現場の運用ルールを徹底させる

システムが異常を知らせた後の対応フローを明確にし、現場の担当者が迷わず動ける手順を整備します。いくら高精度なアラートが出ても、それを受け取った作業員がすぐに対処できなければ意味がありません。既存の点検業務をどう代替し、誰が判断を下すのかを新しい業務プロセスとして定義し直すことが求められます。あわせて、現場への継続的な教育を通じて、新しい手順を運用に定着させます。

導入を進める具体的なステップ

システムを滞りなく稼働させるためには、事前の計画と段階的な検証を重ねることが重要です。

導入ステップ 実施する具体的な内容
対象設備の選定 生産への影響度や故障頻度から優先順位を決める
要件定義 取得するデータ種類と必要なセンサー・通信を設計する
テスト導入 特定のラインで小規模に実施し、検知精度を検証する
運用体制整備 アラート発生時の対応手順を決め、本格運用へ移行する

生産影響の大きい重要設備を選ぶ

工場内の全設備を対象にするのではなく、工程のボトルネックになりやすい設備を優先的にピックアップします。停止した際にライン全体が止まってしまう中核的な装置や、修理部品の調達に時間がかかる特殊な機械などが適しています。対象を絞ることで、限られた予算内で投資対効果を高めやすくなるのが利点です。

要件定義で必要なデータを決める

対象設備のどんな故障を予測したいかを明確にし、それを検知するために必要な物理データを特定します。モーターのベアリング摩耗であれば振動データ、基板の異常発熱であれば温度データというように、予測したい故障に応じて必要なセンサーが変わります。あわせて、通信の頻度やデータを処理する場所(エッジかクラウドか)を含めた全体のシステム構成も設計を行います。

小規模なテスト導入で効果を測る

一部のラインや特定の機械数台に限定してシステムを設置し、データの収集とAIの学習を開始します。PoC(概念実証)と呼ばれるこの段階で、工場特有のノイズ環境下でも正確にデータが取れるかの確認が必要です。設定した閾値やAIの判定結果と、実際の設備状態を定期的にすり合わせ、本稼働に耐えうるシステムの信頼性を検証します。

保全業務の運用体制を整備する

テストで得られた結果をもとに検知モデルを最適化し、現場の日常業務に組み込みます。異常を知らせる画面の確認頻度や、アラートレベルに応じた対応フロー(即時停止、翌日点検など)を関係者間でマニュアル化する作業が必要です。現場の作業員が直感的に操作できるダッシュボードを構築し、特定の熟練者に頼らない保全プロセスを完成させます。

エッジ処理を行う産業用PCの役割

大量のデータをクラウドへ送る前の一次処理基盤として、現場に設置する産業用PCの活用が進んでいます。

産業用PCの役割 もたらす具体的なメリット
一次処理による通信削減 クラウドへ送るデータ量を抑え、通信コストと遅延を防ぐ
リアルタイムな異常検知 現場側で判定を行うため、瞬時に設備を停止できる
過酷な環境での安定稼働 振動や温度変化の激しい工場内でもシステムが止まらない

一次処理により通信負荷を減らす

センサーから送られてくる高周波の生データをすべてクラウドに上げるのではなく、現場のPCで必要な情報だけを抽出します。数ミリ秒単位で取得する振動データなどは、そのまま外部へ送信するとネットワーク帯域を圧迫し、通信費の増大を招く要因です。エッジ側で異常箇所のみを切り出して送信することで、インフラ全体への負荷を大きく軽減しやすくなります。

異常をリアルタイムに検知する

クラウドを経由せず、現場のPC内でAI推論を実行することで、遅延のない即時判断を実現します。通信を往復させるタイムラグが命取りになる高速な生産ラインでは、ミリ秒単位での制御が求められる環境も珍しくありません。エッジ処理基盤であれば、危険な兆候を捉えた瞬間に設備へ停止信号を送り、深刻な破損を未然に防ぎやすくなります。

【関連記事】エッジAIとは何かを簡単に解説!メリット・デメリットも紹介

過酷な工場環境でも安定稼働する

粉塵や振動、極端な温度変化にさらされる現場でも、専用に設計された産業用PCであれば長期間の連続稼働に耐えやすくなります。一般的なオフィス用PCを工場に持ち込むと、内部に異物が詰まるなどしてすぐ故障につながりかねません。ファンレス構造や広温度範囲対応を備えた産業用PCを選ぶことが、予知保全システム全体の信頼性を高めるうえで重要になります。

【関連記事】産業用PCとは?民生用PCとの違いはなに?

予知保全を活用した導入事例

導入事例を確認することで、予知保全の具体的な活用イメージがつかみやすくなります。ここでは、経済産業省が公表する「スマート保安先進事例集」から、設備の異常予兆検知に取り組む2つの事例をご紹介します。業種は異なりますが、いずれも稼働データを継続的に取得し、保安レベルの向上や現場負荷の軽減を目指している点が共通しています。

住友化学:無線型振動計を活用した設備監視システム

住友化学株式会社様では、石油化学誘導品工場において、無線型振動計を活用した設備監視システムを導入しています。振動センサーで検出したデータは、1時間に1回の頻度で計器室の監視システムへ取り込まれ、遠隔地の画面上でも確認できる仕組みです。リアルタイムで定量的な数値データのトレンドを監視することにより、設備の異常予兆発生を早期に把握しやすくなりました。従来は作業員が現場を巡回して五感で状態を確認していましたが、導入後は巡回業務の工数削減にもつながっています。

参考:スマート保安先進事例集(経済産業省)

日本製鉄:インバリアント分析を活用した異常予兆検知

日本製鉄株式会社では、製鉄所の熱間圧延工程(仕上圧延プロセス)における異常検知に、インバリアント分析を導入しています。インバリアント分析とは、通常時のセンサーデータ同士の関係性と、リアルタイムで入ってくるデータ群を比較し、異常の予兆を検知する手法です。制御用ネットワークから約2,000項目のデータを取得し、10分ごとに分析を実施。トラブル原因と考えられる要因の上位5件を表示する仕組みのため、運転員は状況把握や対応判断に注力できます。異常発生から把握までの時間短縮や、業務負荷の軽減などが期待されています。

参考:スマート保安先進事例集(経済産業省)

まとめ

予知保全は、設備に設置したセンサーとIoT、AI解析を組み合わせることで、故障の兆候をリアルタイムに察知する保全手法です。突発的なダウンタイムの回避や部品交換コストの最適化に直結する一方で、現場の環境に適した通信インフラの構築や、膨大なデータを処理する基盤の設計が求められます。

特に工場内では、全データをクラウドに送信しようとすると通信遅延や帯域圧迫が起こりやすく、高速なライン制御に間に合わないケースも珍しくありません。ネットワーク負荷を下げて即時判定を実現するためには、エッジ側でデータを一次処理する仕組みの導入が重要になります。

ポートウェルジャパンでは、−20〜+60℃の広温度対応やIP規格準拠の堅牢ボディを備えたファンレス構造のエッジAI対応産業用PCを幅広くラインナップしています。

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